Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident


Draft document: Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident
Submitted by Takeaki Yatsuhashi, Individual
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新勧告案の日本語抄録にある「総括的要約」の(j)に着目する。

(j) (・・・前略・・・) また、そのレベルは年10mSvを超える必要は一般的にはないであろう。防護の最適化の目標は年1mSv程度のレベルとなるように徐々に低減することである。

 ここでは(j)の”年1mSv程度=the order of 1 mSv per year”に着目し、コメントをする。
1のオーダー(the order of 1 mSv)とは、科学慣行的には1の桁内との解釈である。従って10以下、1から9までが含まれる。この場合は従来の1mSvが、1〜9mSvの範囲の値に緩和される。直前の文章で”年10mSvを超える必要はない”と言うことなので、目標の参考値は1〜9mSvの範囲のどこかが設定される。これは従来1mSvとしてきたことから見れば、大幅な目標値の緩和となり、安全基準の大幅な後退である。

 日本政府は従来からICRPの勧告を拠り所としており、普及期の目標値が年1mSvから年1mSvオーダー、ないしは年1〜9mSvにまで後退できれば、除染努力を大幅に減少させることが出来る。9mSvまで行かなくても、数mSvでも大幅に減少させうる。日本政府には大幅な負担軽減となる。しかしこのことは、住民の被曝リスクが増加することと同時に、事故時の負担軽減を通して、原子力発電の利用拡大を促すことになる。
 
 規制の参考値を厳しくすることは、原子力発電の利用をより慎重に進めることを促す。しかし反対に、規制の参考値を緩くすることは、事故後の対応が容易化され、原子力発電の利用を手軽に進めることを促すことになる。

 他方で世界のエネルギー技術の進展を見れば、再生可能エネルギーが今後の主力のエネルギーになることは明確である。原子力発電を市民社会で利用する必然性はますます低下している。そのトレンドにある状況下で、市民社会を必然的に悲惨な状況に追い込む事故を許容しやすくするように規制値を誘導することは、市民社会の希望と逆行している。

 上記の観点から、「1mSvのオーダー」の提案を止め、従来通りに1mSvとすることが必要である。


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